ルフトハンザグループのITAエアウェイズ(AZ)成長計画

ルフトハンザグループのITAエアウェイズ(AZ)成長計画

イタリアのITAエアウェイズ(AZ)は、今後数年で大きな成長を目指しています。
 
2025年1月にルフトハンザ・グループの一員となって以降、同社は事業の方向性を大きく転換しました。
 
ルフトハンザ・ドイツ航空(LH)との運航スケジュール調整を進め、自社のマイレージプログラム「Volare」をルフトハンザグループの「Miles & More」と連携。
 
また、長年所属していたスカイチームを脱退し、スターアライアンスへの加盟を申請。
 
さらに、ユナイテッド航空(UA)とエア・カナダ(AC)が参加するルフトハンザの大西洋路線共同事業(ジョイントベンチャー)への参加も目指しています。
 
AZは2027年までにルフトハンザ・グループの完全な中核メンバーとして機能する見通しです。
 
その際、現在41%を保有しているルフトハンザが、ITAの全株式を取得する計画も進行しています。

統合の背景と課題

ルフトハンザ・グループ自体もいま転換期を迎えています。
 
エールフランス=KLMグループやブリティッシュ・エアウェイズを擁するIAGと比較すると、経営面でやや後れを取っており、コスト削減と効率化を柱とした再編計画を進めている最中です。
 
この中で、イタリアのローマ・フィウミチーノ空港(FCO)を戦略拠点とするAZの統合は、グループ全体の競争力を高める鍵とされています。
 
特にアメリカ市場は、AZにとってもルフトハンザ・グループにとっても最重要エリアの一つです。

UAとの連携で拡大狙う

LHとUAはすでに米国運輸省に、AZを大西洋路線ジョイントベンチャー「A++」に追加する申請を提出しています。
 
この枠組みに入ることで、AZはスケジュールや運賃を共同で設定し、ヨーロッパとアメリカ間の路線を一体的に販売・運航できるようになります。
 
参加航空会社にはオーストリア航空(OS)、ブリュッセル航空(SN)、スイスインターナショナルエアラインズ(LX)も含まれます。
 
こうした提携により、新しい路線の開設や利便性の向上が見込まれる一方で、独立した競合が減り、価格競争が弱まる懸念もあります。
 
AZは2025年9月にUAとマイレージ連携を開始しており、今後はネットワーク構築でもUAのハブ空港との接続強化を進める予定です。
 
候補地としては、ヒューストン(IAH)やニューヨーク近郊のニューアーク(EWR)が挙げられています。
 
2025年10月現在、AZはシカゴ(ORD)、ニューヨーク(JFK)、ワシントンD.C.(IAD)など、アメリカ7都市に就航中。
 
ジョイントベンチャーへの正式参加と米政府の承認を2026年10月までに得て、2027年夏には共同運航を開始する計画です。

機材と収益の壁

AZの成長には課題もあります。
 
最大のボトルネックは保有機材の少なさです。
 
2025年10月現在、長距離路線に対応するのはエアバスA330-200/A330-900/A350-900の計22機のみ。
 
今後納入予定のA330-900型機6機も、古いA330-200の置き換えに充てられる見込みで、新規拡大にはつながりません。
 
エアバスは2030年代初頭までA350の納入枠が埋まっており、リース機も高額。
 
現在は中古機の導入も検討しているそうです。
 
完全統合後は、ルフトハンザ・グループ全体の発注ネットワークを活用できる可能性もあります。
 
LH自身も機材更新の遅れや新座席「アレグリス」導入の認証待ちなどの課題を抱えており、AZの拡大には時間がかかる見通しです。
 
財務面でも、AZはまだ黒字化していません。
 
旧アリタリアの後継会社として再出発したものの、2025年前半は約4,600万ユーロ(約54億円)の営業赤字を計上。
 
年後半での損益均衡を目指しています。

南方への拡大構想

AZは、パリ=シャルル・ド・ゴール空港(CDG)がアフリカへのハブ、マドリード=バラハス空港(MAD)が南米への拠点であるように、ローマを“南の要”として位置づけたい考えです。
 
AZは今後、アフリカではコートジボワールのアビジャン(ABJ)、ナイジェリアのラゴス(LOS)、南米ではボゴタ(BOG)、リマ(LIM)、サンティアゴ(SCL)といった都市への新路線を検討しています。
 
アフリカ方面はA321neoのプレミアム仕様機で対応可能ですが、南米路線やアメリカ西海岸線の拡大には大型のワイドボディ機が不可欠です。
 
また、AZは現在、一部のA321neoでフルフラットシートを備えた長距離仕様を試験運用中。
 
セネガルのダカール(DCC)やガーナのアクラ(ACC)への運航で採算性を検証しており、2027年までに結果を見てA321LRまたはA321XLRの導入を判断する計画です。
 
これらの機材なら、ローマから米東海岸や中東、サハラ以南のアフリカまで直行できるとされています。

マイレージとアライアンスの統合

機材面の制約がある一方で、AZはルフトハンザ・グループとのロイヤルティプログラム統合を急ピッチで進めています。
 
Volareプログラムは2026年2月末までに「Miles & More」に統合予定で、すでに獲得・利用・ステータス条件などはグループ共通化が進んでいます。
 
さらにAZは、2026年6月までにスターアライアンスへの正式加盟を目指しています。

まとめ

先日AZに搭乗してきましたが、遅れがあるのは旧アリタリアから変わらないようです。
 
遅れを少なくするのも課題の一つだと思いますが、FCOのラウンジは美しくて好きです。

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