ヴァージン・アトランティック航空(VS)のソウル仁川(ICN)線詳細

2026/3/29より、ヴァージン・アトランティック航空(VS)はロンドン・ヒースロー(LHR)とソウル仁川(ICN)を結ぶ新たな直行便を毎日運航します。
全長約8,885kmにおよぶこの新路線は、以下のスケジュールで予定されています。
VS207 : LHR発 10:55 -> ICN着 翌朝 7:15
VS208 : ICN発 9:10 -> LHR着 15:40
機材にはボーイング787-9型機が使用され、座席構成は計258席(ビジネスクラス31席、プレミアムエコノミー35席、エコノミー192席)となります。
運航開始に先立ち、2025/5/14より航空券の販売が開始される予定です。
運航開始の経緯
この路線の背景には、2023年初頭に公表された、ある重要な計画が関係しています。
VSはこの新規就航によって、LHRでの発着枠(スロット)を新たに確保し、さらに韓国の航空業界再編においても一役買っています。
というのも、最近になって大韓航空(KE)とアシアナ航空(OZ)の統合が正式に承認されましたが、この合併には各国の独占禁止当局の承認が必要でした。
中でもイギリス当局は、「英国 – 韓国間の直行便が両社しか運航していないため、合併後は市場競争がなくなってしまう」という懸念を示していました。
この問題を解決するため、KEはイギリス当局と以下の内容で合意しました。
・KEはLHRの発着枠(週7往復分)をVSに提供する
・VSはこの枠を使い、ロンドンとソウルを結ぶ便を運航することができる
このようにして、消費者にとっての選択肢と競争が維持されることになります。
2025年5月現在、VSのアジア路線網は非常に限定的となっています。
同社はインドへの路線を通年運航しているほか、モルディブへの便を季節限定で運航。また、リヤド航空(RX)との提携の一環として、サウジアラビアのリヤド(RUH)への新路線も開始しました。
一方で、VSは過去に東方面への長距離路線を次々と撤退しており、それは最近数年にわたるイスラマバード(ISB)、ラホール(LHE)、上海(PVG)などの路線終了にとどまりません。
もっと以前には、香港(HKG)や東京(NRT)といった主要都市への運航も行っていましたが、すでにこれらの路線も廃止されています。
VSがソウル線を自らの判断で開設するとは正直思えませんが、今回の背景を考えれば納得はできます。
LHRを拠点とする航空会社にとって最大の課題のひとつは、貴重な発着枠をどう確保するかという点です。
新たなスロットが与えられるなら、多少無理があっても路線開設を検討する強い動機になります。
VSはスカイチーム加盟航空会社であり、韓国での接続性についてはパートナーのKEに頼ることができます。
さらに、デルタ航空(DL)はVSの株式を49%保有しており、KEとは太平洋路線の共同事業を展開中。
つまり、KEとOZの合併承認を得るためにも、この路線の開設はDLにとっても意味のある動きだったと考えられます。
そうした経緯を踏まえると、今回のソウル線は「外的要因による戦略的な開設」と見るのが自然でしょう。
とはいえ、この路線が長期的に維持されるかどうかは未知数です。
注目すべき点として、今回の合意条件には「このソウル路線を最低3年間運航すれば、その後スロットは別路線に転用可能」といった内容が含まれています。
つまり、3年間は維持される可能性が高いものの、それ以降も継続されるかは状況次第です。
ヴァージン・アトランティックの保有機材数は限られており、今後大きく機材数を増やす予定もないため、1機ごとの稼働効率が非常に重要です。
まとめ
この路線が長く続くかどうかには懐疑的です。
ICN以遠の乗り継ぎ需要についても、多くの乗客は中東系キャリアや、サービス品質に定評のあるアジア系航空会社を選ぶ可能性が高いでしょう。
ちなみに、2025/5/5時点で特典航空券の座席は出てきませんでした。
これも5/14より順次、表示されるようになるのでしょう。
とりあえず就航日フライト、ちょっと狙ってみようかな。