エミレーツ航空(EK)とマリオット・インターナショナルは、オーストラリアのニューサウスウェールズ州ウルガン・バレーにおいて、世界初となる「リッツ・カールトン・ロッジ」を2026年半ばに開業すると発表しました。
自然保護を重視した低密度型ラグジュアリーという新しいコンセプトで、ブランドの新たな展開を図ります。
世界最大級の航空会社とホテルグループによる協業であり、プレミアム志向のネイチャートラベル需要が高まる中、オーストラリア地方観光への大規模投資としても注目を集めています。
ブランドにとって大きな挑戦
リッツ・カールトンが新しいブランド形態を打ち出すのは簡単なことではありません。
これまで都市部の象徴的な立地と洗練されたサービスで評価を築いてきたブランドが、オーストラリアの奥地でロッジという形態を展開するのは大胆な挑戦といえます。
正式名称は「Emirates Wolgan Valley, a Ritz-Carlton Lodge」です。
ユネスコ世界遺産に登録されているグレーター・ブルーマウンテンズ地域内、約7,000エーカーの私有保護区に、わずか40棟の独立型ロッジを設けます。
開発は保護区全体の2%未満に抑えられ、自然環境と静寂を維持する設計となっています。
この希少性そのものがビジネスモデルの一部です。
距離や天候、野生動物といった自然環境は、ホテルのブランド基準どおりには動きません。
今回の取り組みは、厳格なサービス基準を持つラグジュアリーブランドが大自然の中でどこまで実力を発揮できるのかを試す挑戦でもあります。
EKの長期的な取り組み
EKにとって、このプロジェクトは突然の新規参入ではありません。
EKは2006年以降、ウルガン・バレーに約1億5,000万オーストラリアドルを投資し、自然保護型リゾートとして開発を進めてきました。
1832年建築の歴史的邸宅の修復や、100万本以上の在来種の植樹など、環境保全にも力を入れてきました。
今回さらに約5,000万オーストラリアドルを投じ、マリオットと連携して全面改装を実施します。
リッツ・カールトンの基準に沿ったデザインやサービスへと刷新される予定です。
約150人の雇用創出も見込まれ、地域経済への貢献も期待されています。
アクセスも体験の一部
ロッジへのアクセス方法も特別です。
シドニーなど主要都市から現地へ向かった後、最終区間はヘリコプターまたは四輪駆動車のみでの移動となります。
未舗装の山道を進む体験は、単なる送迎ではなく旅の一部といえるでしょう。
利便性よりも体験価値を重視する姿勢が明確に打ち出されています。
自然と向き合う滞在体験
40棟すべてのロッジには専用プールと特別仕様のアメニティが備えられます。
ですが、この施設の真価は自然環境そのものにあります。
敷地内ではカンガルーやウォンバット、ブラッシュテイルド・ロックワラビーなどの野生動物が見られ、希少なウォレマイ・パインも自生しています。
自然保護をテーマにしたアクティビティや、星空の下で過ごすガイド付き宿泊体験など、都市型ホテルとは異なる滞在が提供されます。
改装される歴史的ホームステッドには、到着ラウンジやレストラン、ワインルーム、スパ、乗馬施設などが設けられる予定です。
マリオットのオーストラリア戦略
マリオットは現在、オーストラリア国内で約33軒を展開しており、さらに22軒が開発段階にあります。
今回のロッジは、パースやメルボルンのリッツ・カールトンに続く展開であり、ブランドを都市部から地方の自然環境へと拡張する重要な取り組みです。
まとめ
このプロジェクトは決して安全策ではありません。
厳しい期待を背負うラグジュアリーブランドが、大自然という制御しきれない環境で真価を問われるからです。
成功すれば、グローバルブランドが自然保護や地域経済とどのように共存できるかの新たなモデルとなるでしょう。
結果がどうであれ、業界にとって大きな示唆を与える取り組みとなりそうです。
ウルガン・バレーは、2026年のホテル業界において最も重要な開業案件の一つになる可能性があります。
